今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2017年1月号
良い赤字と悪い赤字の法則
1.中小製造業が乗り越えられない壁
一律に安くするのではなく、製品別の客数椎移と製造原価を合わせて最適の価格政策を検討する必変があります。このため、個別製品ごとの原価と利益の把握が大切です。
「個別製品利益=売上高-(製造原価+管理コスト)」は、その製品の直接製造コストと間接経費負担額(配賦製造といいます) の2段階のコストを超える必要があります。この2つを超えていれば、業績に貢献している優良製品です。しかし、その製品の売上高が製造原価さえカバーできなければ、売れば売るほど赤字が累積していくため直ちに製造廃止の決断が必要な悪い赤字です。
一方、製造コストはカバーしているが、配賦された管理コストの全部を負担できていない場合、良い赤字として悪い赤字とは区別し、生産廃止に踏み切るか否かは慎重に判断すべきです。良い赤字製品の製造停止は、直接製造費は削減されるものの、負担していた間接経費は残ったほかの製品の間接費として負担させられることになり、予想外に企業全体の収益力改善に役立たない場合が多いのです。製造廃止する前にコストの見直しが基本戦略と考えられます。
製造業の利益確保は原価管理の撤底が必要ですが、大部分の中小製造業では、システムの導入や運用コストなどから直接利益に貢献しないとして敬遠され、乗り越えられない壁のような存在になっています。
2.原価管理で利益を生み出す
原価管理はコストの削減と考えられますが、戦略的な視点からも大きな貢献が期待できます。例えば、値下げを可能にする販売数量の把握、製品の生産打ち切りに伴うコストの増減、発注単価の目安などの判断資料、納品先からの単価引下げ要請、競合業者との価格競争の是非など重要な意志決定の判断に大きく関与します。コスト削減といえば、手近な光熱費や交際賽の節約などに目が行きがちですが、製造コスト削減効果の方が格段に大きいのです。
3.原価計算の要諦は間接費の取扱
一律に安くするのではなく、製品別の客数椎移と製造原価を合わせて最適の価格政策を検討する必変があります。このため、個別製品ごとの原価と利益の把握が大切です。
中小企業特有の問題として複数の作業を1人が行う場合、製品ごとへのコストの配賦が複雑で計算が困難だという問題があります。
(1)製造原価要素の把握
製造原価は、材料費、現場労務費、外注費、その他の製造経費の4つに分けられます。全てを把握するには本格的なシステム導入が必要ですが、思い切って売上や利益に対して影響力の大きい製品に絞り、計算してみます。まず、製品を売上高の多い順番に並べ、上から20%程度に紋って重点的に管理します。残余の製品は、品数は多いが金額的には少額であり一括して管理します。
(2)直接費と共通費に分ける
材料費など個別製品に直接関係するコストはその製品に直接原価として貼り付けます。複数の製品に共通するコストは一括してその他配賦原価とします。この結果、各製品に直接張り付けられたコストと、その他の配賦原価に分けられます。
(3)配賦対象原価の配分
製品と明確に関係があるコスト以外のコストは、一括して一定の配賦基準(生産量や労務費など)に応じて各製品に配賦します。大雑把ですが、最低限のコストで原価管理の入口が見えるはずです。