今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2010年10月号
- 10月1日から、強制的に、新しく法人税にグループ税制が適用されると聞きましたが、何が、どう変わるのか良くわかりません。
- 法人税は、最近、企業に成長を促すような積極性を加味してきたような印象を持っています。
一、グループ税制の背景
法人税は、最近、企業に成長を促すような積極性を加味してきたような印象を持っています。このような視点から見ると、グループ税制も、これまで導入されてきた適格経営組織再編成税制、連結納税制度等の延長線上に位置づけられていると考えられます。
基本的に、法人税は、企業会計上の利益を土台として課税標準が決まる仕組みになっています。このため、上場会社や大会社は国際会計基準の適用を受け、グループ全体の連結会計が基本であり、法人税も、基本的に連結会計に則った連結納税制度が適用されます。
しかし、中小企業のほとんどは、複雑な仕組みを敬遠し、通常は、その法人のみで所得を計算する単体納税を主としています。今回のグループ税制は、100%の出資関係がある親子会社間の特定取引については、グループ内部の取引として課税対象から除外するという画期的な制度になっています。
二、課税対象から除外する取引とは
課税対象から除外する取引は、主として次の2つです。
(1)親会社、子会社間の不動産等の譲渡によって生じた利益または損失
(2)グループ内の取引のうち、経済的利益の供与、例えば、無利息貸付や無償での金銭の贈与、出向者の給与等の負担額等
これまで、このような経済的利益の供与は、受贈益や寄付金と認定され、課税対象とされていましたが、グループ税制では、このような取引によって生じた利益や損失は法人税の対象としないと云うことです。
三、100%親、子会社とは何か
基本的には100%の親、子会社間の取引が条件です。しかし、単に、会社間の出資だけでなく、中小企業の特性とも云える同族株主等も含め、かなり広範囲での出資関係が適用の対象とされます。この詳細は複雑になりますから会計事務所等でご確認ください。
四、そんなに重要な改正ですか
グループ税制を適用したとしても、連結納税をするか否かは法人の任意ですかぎ、この制度の導入は、これからの中小企業の活性化が、M&Aや分社、分割等経営組織の再編成、新事業が軌道になるまでの間、親会社が資金や人材面で支援できるなど幅広い分野での活用に期待がかかります。これからの中小企業の繁栄の道筋を暗示しているとも云えます。