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今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします

2016年7月号
数字は魔物
―固定費は変動費に変動費は固定費に変身する

食品製造販売業です。材料費高騰のため主力商品を40円値上げしたところ、売り上げが減少し悩んでいます。

1.価格アップは慎重に

これまで品質が良ければ「ちょい高」でも購入していた商品態度が大きく変化し、最近は「安さ」が最も重視されています。このような経済環境の中では、販売価格が消費者にどう見えるのか数字的裏付けにより慎重に検討する必要があります。

2.固定費と変動費の法則

損益分岐点分析では、総コストを固定費、変動費、限界利益に分けて説明しています。固定費は売上高の減少に関係なく毎月一定額が支出される経費(人件費、家賃、リース料など)、変動費は売上原価のように売上高の増減によって増減する経費です。限界利益とは、売上高から変動費を控除した後の金額です。売上高に対する限界利益の割合は限界利益率といいます。限界利益は、固定費を消去し、なお利益を獲得する源泉であり、採算性を判定する重要な指標です。販売個数とコスト構造の分析とは別に、製品1個あたりのコストを分析すると異なる視点が見えてきます。

(1)会社全体の固定費は商品1個あたりでは変動費に変わる

例えば、固定費が100万円あるとして、販売個数が10個であれば1個あたりの固定費は10万円です。しかし、1OO個で考えると1個あたりの固定費は1万円です。会社全体では固定費であっても、製品の販売個数から見れば個数により変化する変動費となるのです。

(2)会社全体では変動費だが商品1個あたりでは固定費と考えられる

変動費は、会社全体では売り上げに応じて変動するコストだと説明されています。しかし、製品1個あたりで見ると、基本的には材料費、包装費などは、1個であれ100個であれ、1個あたりのコスト割合は同じですから固定費と考えても良さそうです(規模の利益で材料費の購入量が多ければ多いほど材料単価は下がりますが、ここでは無視します)。

3.販売価格は販売数量から検討する

このように販売数量とコストの関係は、その製品の販売単価にいくつかの示唆を与えてくれます。下記の(1)から(3)までのシミュレーションで計算すると、販売個数の増減により、いくつかの選択肢があることが分かります。材料費が上がったから、販売単価を上げるという発想では単純すぎます。

現状 ①販売単価
②販売個数
③売上高(①×②)
④固定費
⑤材料費等変動費
⑥限界利益率(1-⑤)
⑦限界利益(③×⑥)
⑧利益獲得額(⑦-④)
1,860円
4,000個
7,440,000円
2,500,000円
60%
40%
2,976,000円
476,000円
材料費
2
%ア

(1)販売価格を40円上げて対処したい ①販売単価
②材料費等変動費(2%アップ)
③限界利益率(1-②)
④固定費+利益
⑤目標売上高(④/③)
⑥目標販売個数(⑤/①)
1,900円
62%
38%
2,976,000円
7,831,000円
4,121個
現状より121個、販売個数の増加があれば原稿利益は確保できる。
(2)現状の販売単価のまま販売個数の増加で対処したい ①販売単価
②材料費等変動費(2%アップ)
③限界利益率(1-②)
④固定費+利益
⑤目標売上高(④/③)
⑥目標販売個数(⑤/①)
1,860円
62%
38%
2,976,000円
7,831,000円
4,210個
現状より210個、販売個数の増加する見込みなら値上げしなくても現行利益は確保できる。
(3)販売価格を60円下げて販売個数の増加でコストを吸収したい ①販売単価
②材料費等変動費(2%アップ)
③限界利益率(1-②)
④固定費+利益
⑤目標売上高(④/③)
⑥目標販売個数(⑤/①)
1,800円
62%
38%
2,976,000円
7,831,000円
4,350個
現状より350個、販売個数が増加する見込みなら値下げしても現行利益は確保できる。

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