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今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします

2017年7月号
残業を減らせ(2)―ムダを探せ

先月号で、残業削減は企業の生産性向上と同じであり、労使一体で取組む必要があることを指摘しました。今回はさらに検討を深めます。

1.「電通事件」から学ぶもの

前回、残業が発生する部署と人、仕事内容、時間帯等を実際に自分の目で見て実態を把握することがスタートだと言いました。マスコミをにぎわせた「電通事件」でも月80時間以上の過剰残業は、全社員7千人のうち114人、全体の1.6%程度であり、特定部門に集中していたと聞いています。直属の上司や責任者がもう少し気を配っていたら、こんなに深刻な問題にならなかったように感じます。このように残業問題解決は経営者と同時に中間管理職が重要な役割を担っており、意識改革、部下との接し方、職場全体のコミュニケーションのあり方などにも大きな教訓を残しています。

2.経営者の強い意思表示が第一歩

残業問題は企業規模や業種、また技術職、営業職、管理職、一般社員などでそれぞれ残業発生原因が異なるため、それぞれに対応した改善策が必要になります。また、いったん決めても労働環境の変化に合わせて常に改善を加えていくことが必要です。通常、どんな原因で残業が発生するかを検討してみます。

(1)従業員のスキルが低い上に業務量が多い

(2)日中は来客に追われ、業務は残業して行う

(3)会議が多く資料作りは残業で行う。また、会議は全員が帰社してから行われるので開始時間も終了時間も決まりがない

(4)他部門とのすり合わせに時間がとられる

(5)営業部門の帰社が遅く、その前に退社できない。また、上役や同僚が残業しているので帰りにくい

(6)顧客の要望で業務外サービスを迫られるが、今後の取引を考えると断れない

(7)仕事が好きなので、終わった後の達成感を考えると他人に頼めない

(8)社内に仕事の手順書やマニュアルがない

(9)自分自身が完璧主義であり、さらに、任せられる部下が育っていない

(10)連絡が不十分でやり直し、手戻しの仕事が多い

それぞれの職場で日常的に見られる光景です。残業は、各人の仕事に対する取り組み姿勢の違い、組織の問題、コミュニケーションの問題などが混ざり合って形成された企業風土が土台にあることが分かります。

3.仕事のコストを把握する

残業時間削減の第一歩は、無駄な仕事や行動の発見、改善に尽きるわけですが、少しコストとしての人件費を考えてみましょう。

年収400万円の人の1時間あたりのコストを計算すると以下のように計算されます。

(1)年収400万円として社会保険料が年収の15%で60万円、通勤費18万円(月額1万5千円)で合計478万円の人件費です。

(2)年間総労働時間は、週休制採用企業の場合、月間勤務日数20日(労働白書の統計)で1日8時間労働とすると年間1920時間の勤務になります。

(3)1時間あたり労働コストは2490円と計算されます。この例の場合、従業員20名で1時間会議をすると49800円の会議費がコストです。営業担当が取引先を訪問した場合、その企業まで往復1時間、営業時間1時間とすれば約5千円(2490円×2時間)となります。

実効性のある改善は抽象的な言葉ではなく、数字で判断することが効果的です。次回は、さらに具体的な改善手法について深堀りしていきます。

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