今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2016年1月号
消費税軽減税率を考える -1-
1 単一税率から複数税率へ転換
軽減税率の導入自体は、ほぽ合意しているようですが、適用範囲をめぐり調整が難航しています。今や、消費税収がすべての税収のトップに躍り出でおり、この動向によっては社会保障の財源不足にもつながると議論が沸騰しているようです。
2 消費税の特徴
今さらですが、消費税の特徴を整理してみます。
(1)税率は低くても税収は大きい。(2)公平性、中立性が優れていて簡素である。(3)最低限の生活費も課税対象となる。(4)消費税は建前上、消費
者が負担することになっているが、価格転嫁できず、事業者自身が負担する司能性がある。
3 軽減税率の短所を考える
(1)消費税は低所得者の生活費そのものに容赦なく課税されます。この最大の短所を補う仕組みの是正策が軽減税率の適用です。
軽減税率の適用範囲を拡大しすぎると、税収そのものが大きく減少するために、減収分を標準課税(一〇パーセント)のさらなる税率アップによって補うか、財源の使途である社会保障費の削減を図る必要があるため議論が難航しているわけです。
②軽減税率適用による減税額は高所得者層ほど多く、本来の目的である低所得者層の減税額は小さい。
③年収三百万円未満層の軽減税率額概算は、食料品支出額が年八十四万円で八パーセントの軽減税率適用の場合、消費税減税額は年間一万七千円程度とされます。年収一千万円以上の所得者の減税額は二万七千円と高所得者の減税額が多くなります。
4 軽減税率対象品目の線引きが困難
軽減税率の先進国であるEU諸国では、政権が変わるたびに線引きが変わると言われるほど政治的な駆け引きが繰り広げられ、本来の目的である低所得者対策としての意義が埋没している感があります。もっともEU諸国の軽減税率は、それまでの間接税を付加価値税に統一する際、そこまでの税特権を維持するための妥協策として導入された歴史的背景が根幹にあり、低所得者層に対する負担軽減を直接の目的として導入されていない場合が多いようです。
次回は具体的な問題を検討してみます。