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今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします

2015年2月号
この不条理な現実にたじろぐ

長年、鉄工場を営んでいます。最近、ようやく経営も安定し、従業員も五十人規模にまで増えましたが、私は療養に入らざるを得なくなりました。子どもには引き継ぎの意思がなく、工場長が引き継ぐことになりました。どのような手順で行ったらよいでしょうか。

一、 増加傾向にあるMBOによる引き継ぎ

このようなケースもM&Aの一種ですが、完全な第三者に譲渡する場合と異なり、これまでの関係者に引き継いでもらう手法で、MBO(マネージメント・バイアウト)といいます。事業承継の現場では、むしろ、一般的なM&Aよりも圧倒的に多く、また、承継後もうまく経営されているケースが多いように思われます。

二、 MBOによる事業承継のメリット

最大の利点は、従業員や取引先企業に事業承継に対する安心感が醸成されることであろうと考えられます。事業を譲渡する社長にとっても、気心の知っている人物に引き継いでもらうことの安心感があります。一方、後継者も判断に困る場合などに相談を受けられることなどが挙げられます。

三、 MBOにおける事業承継のデメリット

最大の問題点は、株式の売買価格の決定と株式譲受代金の資金調達です。MBOは、現社長から当社の株式を買い取ること(最低限、発行済株式総数の三分の二)と、代表取締役に就任することで、実質的な会社の支配権と経営権を取得することにより成立します。最近の例で、株式の取得がなく、代表取締役に就任したが、業績が好転した途端に解任されたという相談がありました。経営権だけ渡されても、単なる雇われマダムで、いつ引き下ろされるかわからず、責任だけが重いことになります。

四、 株式の評価方法

中小企業の事業承継における株式評価は、親族外の場合、譲渡価格については時価によることとしています。

例えば、帳簿価格を時価に評価替えをして算定する(時価純資産法)、同業種の上場会社株式の時価を基準とする(同業種比準価額法)などがありますが、中小企業の場合、「時価純資産+営業権」がより現実的だと思われます。時価純資産は賃借対照表上の全ての資産、負債を時価で評価替えをすることですが、財務デューデリジェンス※を前提としています。

また、営業権の評価は国税局の評価方法「超過利益金額×原則十年とする営業権の持続年数に応じた基準年利率による年金年利率」から計算することとされています。

このような複雑怪奇な算定方式と、評価額が企業の精算を前提とする時価となるため高額になりすぎることが、事業承継がスムーズにいかない大きな理由になっています。

※買収先企業の価値を判断するため、企業が作成した財務諸表の適正性を検証すること

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