今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2017年4月号
残業時間削減のスタートを切ろう
1.過労死等防止対策白書が公表された
平成26年に「過労死防止推進法」が成立し、これを受けで28年版の白書が発表されました。この中で労働者一人あたりの年間総労働時間は緩やかに減少しています。しかし、総実労働時間が2千時間前後で高止まりしていること、さらに1選間の就業時間が60時間以上の人の割合が30歳代、40歳代の男性に特に多い旨が報告されました。他の統計資料では、週休二日制が導入されてから特に残業時間が増加したとの指摘もあり、企業にとって業務の中心的存在であり、働き盛りのこの年代の健康維持が重要な課題になっています。
2.労働時間短縮と生産性向上の両立
経営者にとっては、単に残業時間の短縮だけを目的に人員増加や残業手当を支払うだけの対策で終わってしまっては、人件費負担の増加により経営の先行きが不安になります。生産性の向上による残業時間の削減という視点が重要です。その意味では、経営者と社員が共通の認識に立つことが求められ、どちらの立場にしろ「生産性を上げて残業をなくす」という共通の認識に立つことがスタートになると考えられます。
3.業務内容の分析を行う
勤務時間の削減は、まず現状の把握です。各人の仕事の内容をできるだけ細かく分析し(できれば1日の時間帯ごとに)、その人のスキルがなければならない仕事、ある程度マニュアル化して、誰もができるように標準化できる仕事、パートさんでもできる仕事、外注でできる仕事、無くしてもいい仕事などに分類し、当面はその人の就業時間全体の20%削減を目標とします。全ての人の仕事の質と量の標準化を図ることがポイントです。
4.労働時間の管理を行う
恒常的な残業をしている会社では「残業は自分の裁量で行える」という考え方がルール化しています。しかし、所定労働時間内の早退などが承認を要すると同様に、所定外労働(残業)も原則は業務命令が必要であることを認識し、事前届出制を導入しましょう。しかし、単に監視しているなどの誤解を生まないよう、どのような仕事のため(残業までして行う仕事か、その人でなければならない仕事かも含め)残業するのか把握し、双方で改善策を検討するなどの姿勢を示すことが必要です。
5.残業の仕方を分祈する
(1)仕事抱え込み型の残業
全ての仕事を一人で抱え込んで、一生懸命に残業をしているタイプです。真面目な人柄に多いのですが、この仕事は自分にしかできないという思い込みや、業務が複雑で手伝ってもらう余地がない、手伝ってもらうと後で手直しをしなければならないなど理由はいろいろありますが、仕事と個人が一体化しています。仕事の洗い出しを徹底し、マニュアル化などによって仕事の切り出しを行うことが必要です。
(2)つきあい型残業
上司や同僚が残業していると自分も帰りにくいとか、仕事に熱心だとアピールしたいなどの理由です。直接の上司に対する指導なども含め、企業風土の改革が必要です。残業手当で収入を増やしているなどもあるそうですが、残業時間の削減による手取りの減少分は賞与でカバーし、収人が減らないような配慮も必要です。
(3)たらたら型残業
就業時間内も時間外も集中して仕事をせず漫然と時間を過ごしてタイプです。基本的な仕事の取り組み姿勢から教育し直す必要がありそうです。