今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2016年5月号
早わかり、中小企業の税制改正
1.法人実効税率の引き下げ
国際競争力強化の中で、法人税実効税率30%以内への引き下げが急務とされていましたが、課税ベース拡大による財源の確保を条件に、精一杯の法人税減税が行われました。欠損金の繰越控除限度額の削減(30年度までに限度額の50%に縮減)や、設備投資減税制度の廃止時期の明確化などが実施されます。(中小企業は、従来通り10年間100%控除)。実効税率(法人税、地方税を含めた税負担額)は、下記のように軽減されます。
中小企業の所得800万円までの実行税率23.2%は変更ありません。しかし、大企業の欠損法人には、欠損金の繰越控除限度額の削減や法人事業税の外形標準課税制度の適用とともに大きな負担増になります。
実行税率 | 現行 | 32.11% |
---|---|
28年度 | 29.97% |
30年度 | 29.74% |
2.建物付属設備の償却方法は定額法に統一
これまでも、建物付属設備の耐用年数は建物自体の耐用年数に準ずるべきではないかという議論がありました。今回は建物付属設備、構築物の耐用年数の変更はないですが、減価償却方法は定額法に一本化します。
3.中小企業が取得する新規の機械装置に償却資産税の軽減措置が適用
景気循環は、消費支出の増加と民間企業の設備投資がエンジンとなっていると言われていますが、現状はともに低調で景気回復に手間取っています。設備投資には償却資産税が課税され、投資意欲を阻害する要因となっていることから、中小企業が取得する新規の機械設備について取得後3年間は償却資産税を2分の1に軽減することとし、赤字法人にも適用されます。次の要件が必要です。
(1)取得価格 160万円以上
(2)10年以内に販売開始した機械を新規に購入すること
(3)生産性が1%以上向上する見込みであること
(4)支援機関(商工会議所等)の認定する生産性向上計画書が必要
4.少額減価償却資産即時償却の特例延長
マイナンバー制度や軽減税率の導入など、企業の事務負担を軽減するため、現行の30万円未満の少額減価償却資産の即時償却制度(その事業年度中取得額の合計300万円を限度)が平成30年3月31日まで延長されました。改正法では、従業員1000人超の中小企業には適用されません。
5.同族会社株式評価方法の見直し
同族会社株式の贈与、相続において、その評価方法は純資産価額方式と類似業種比準価額方式との評価額を企業規模に応ずる一定の割合で按分して評価します。純資産価額方式による評価額は、企業の含み益等が評価額に反映し高額になるため、評価引き下げのために類似業種比準価額方式が導人された経緯があります。
しかし、最近の上場会社株式価格上昇に伴い、評価会社業績がさほど上昇していないのに評価額が著しく増加し、円滑な事業承継に支障をきたすことが懸念され、早急に評価方法見直しの検討が要請されています。
このほか、外形標準課税制度の中小企業への導入についても対応が求められており、今後も中小企業にとって重要な改正が検討されています。