• HOME
  • > 今月の相談コーナー

今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします

2017年12月号
相続税への招待(3) 不動産評価の物差しを考える

Q:今回は自宅や貸家など不動産の評価についてご説明願います。

相続税において不動産の評価は最も関心があるものの一つです。相続税軽減のため空き地に貸家を建てるなどの節税策を勧められたり、子どもに生前贈与して住宅を建てさせるなど頭を悩ませている人が多いようです。しかし、いろいろな節税策も用意されており、首都圏や東京都内、札幌市でも中心部の土地や大地主などを除けば、それほど慌てることもないように思います。

1、不動産評価の原則を把握しよう

(1)宅地の評価

札幌市内の宅地評価は「路線価方式」と「固定資産税評価額倍率方式」の二つがあります。このうち、宅地は国税庁から毎年「路線価図」によって評価額が発表されますが、国税庁のホームページより誰もがいつでも閲覧できます。なお、この路線価図では、道路に面した正方形の1m²あたりの更地価額と借地権割合が示されています。実務的には地姿によって奥行きが長かったり、変形したりしていることも多く一定の補正率により算定します。一方、調整区域などの土地では「固定資産税評価額による倍率方式」により固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算することとされています(倍率についても国税庁より発表されます)。

(2)家屋の評価

住宅など家屋の相続税評価額は固定資産税の課税標準額と同額とされており、構造や経年数にもよりますが建築当初価額の40%程度が目安と言われています。なお、貸家の評価額は固定資産税評価額の7割とされます。

2、小規模宅地の軽減特例

特例として次の三つが定められています。

(1)居住用宅地の軽減特例

被相続人が居住していた住宅敷地について330m²までを限度として評価額の80%が減額されます。この場合、この宅地を配偶者が相続した場合、その後の継続居住や保有を条件とせず無条件にこの特例が適用されます。配偶者以外の法定相続人が相続した場合、これまでも被相続人と同居しており、今後も継続して居住することが適用条件となります。

(2)事業用地の軽減特例

被相続人が自分の事業に利用していた宅地や同族会社所有建物の敷地は、相続人が引き続き事業を継続することを条件とし400m²まで80%の評価額が軽減されます。

(3)貸付事業用地の特例

アパートなどの貸付事業用建物の敷地の場合、200m²まで50%の評価額が軽減されます。なお、居住用と事業用の両方の軽減措置が受けられる場合、それぞれの上限合計額730m²まで適用を受けることができます。なお、その他、貸宅地、貸家建付地などの具体的な評価方法も定められていますから詳細は別途お調べください。

3、不動産の相続税対策について

不動産の相続税対策として、空地にアパートなどの貸家を建築することが盛んに行われています。空地については一切の軽減措置が無く評価額が高くなることは事実です。しかし、将来、急速な人口減少が予想され、不動産市場の活況も東京オリンピックまでとささやかれています。現在、すでにアパートの部屋数の20%が空室となっており、貸家についても15%が空家になっていることも踏まえて慎重に検討すべきです。少なくとも借入金によって新築することなどは再検討する必要があるように考えられます。

次回は相続税の節税対策について検討してみたいと思います。

お問い合わせはこちらからどうぞ

このページのトップへ

過去の記事

【2018年2月号】
労働環境の大転換期を迎える(2) 残業時間の削減に取り組む
【2018年1月号】
労働環境の大転換期を迎える(1) 働き方改革と生産性向上
【2017年12月号】
相続税への招待(3) 不動産評価の物差しを考える
【2017年11月号】
相続税への招待(2) 相続財産の評価
【2017年10月号】
相続税への招待(1)
【2017年9月号】
仕事の効率化―結果の見える化を出発点に
【2017年8月号】
残業を減らせ(3)―全員参加の仕組みをつくる
【2017年7月号】
残業を減らせ(2)―ムダを探せ
【2017年6月号】
残業を減らせ―どこから手を付ける(1)
【2017年5月号】
金融機関との取引関係を検討する
【2017年4月号】
残業時間削減のスタートを切ろう
【2017年3月号】
税制改正 中小企業、サービス業にも目配り
【2017年2月号】
社長、最近、評判悪いっすよ
【2017年1月号】
良い赤字と悪い赤字の法則
【2016年12月号】
節税の出発点 生前贈与
【2016年11月号】
この預金は誰のものだ 相続税その3
【2016年10月号】
前回に引き続き相続税の基本的仕組みについて説明してください。
【2016年9月号】
ある日突然―相続税に悩む
【2016年8月号】
城は石垣、石垣は人
【2016年7月号】
数字は魔物
―固定費は変動費に変動費は固定費に変身する
【2016年6月号】
見えない顧客を探し出す
【2016年5月号】
早わかり、中小企業の税制改正
【2016年4月号】
金融機関との間合いを詰める
【2016年2月号】
悪循環から好循環への転換
【2016年1月号】
消費税軽減税率を考える -1-
【2015年12月号】
最低賃金のアップに泣く
【2015年11月号】
情報が情報を集めて思考停止
【2015年10月号】
支払いを急がない経営体質をつくる
【2015年9月号】
勘違いの経営判断
【2015年8月号】
給与はコストですか
【2015年7月号】
マイナンバー制度と中小企業の実務対策
【2015年6月号】
現場のことはパートさんに聞け
【2015年5月号】
平成27年度税制改正と格差社会
【2015年4月号】
困ったときはボスの顔を見る
【2015年3月号】
顧客は見ている
【2015年2月号】
この不条理な現実にたじろぐ
【2015年1月号】
経営の視点、将来の時点から現在を観る
【2014年12月号】
老舗企業の後継者 誇りと埃と焦りから
【2014年11月号】
金融機関へのラブレター 月次試算表
【2013年5月号】
税制を経営戦略に取り込む
【2013年4月号】
経営者は何故、失敗をするのか
【2013年3月号】
月次試算表で何を把握できるか
【2013年2月号】
金融円滑化法の終結
金融機関対策の再検討 その2
【2013年1月号】
金融機関対策の再検討を検討しよう その1
【2012年7月号】
相続税---大金持ちから小金持ちへ。
【2012年6月号】
知っていますか、顧客心理の常識、非常識。
【2012年5月号】
甘くないケーキのお話
【2011年7月号】
損益分岐点分析を楽しむ--その3
【2011年6月号】
損益分岐点分析を楽しむ--その2
【2011年5月号】
損益分岐点分析を楽しむ--その1
【2011年4月号】
建設業です。売上高が半減していますが従業員を抱えて四苦八苦しています。
【2011年3月号】
2、3年ぶりに、新入社員の入社が決まりました。何とか定着して欲しいのです。どのように接すべきですか。
【2011年2月号】
取引先から、後継者がいない自分の会社を買わないかと云われています。
【2011年1月号】
月次試算表のスピード化を指示しましたが、経理部門の抵抗が強く軌道に乗りません。
【2010年12月号】
1年ほど前に、取引金融機関に中小企業金融円滑化法に基づくリスクを申込み、1年間の返済猶予をして頂きました。しかし、本年の3月から、当初契約通りの約定返済に戻ることになりますが、業績も資金繰りも回復せず、返済をする余裕がありません。
【2010年11月号】
セーフティネット融資制度が、来年3月末で期限切れになると聞きましたが、この際、どのような対策を採ればよいのでしょうか。
【2010年10月号】
10月1日から、強制的に、新しく法人税にグループ税制が適用されると聞きましたが、何が、どう変わるのか良くわかりません。
【2010年9月号】
日航の厳しい再生計画をみるにつけ、当社においても、更に、基本から見直していきたいと考えています。
【2010年8月号】
婦人服販売業です。A社製品は売り足は速いが利幅は薄く、B社製品は売り足が遅いが利幅が高い。どちらを選択すべきですか。
【2010年7月号】
競合店の安売り攻勢に対抗し、それを上回る販売価額の引下げを検討しています。
【2010年6月号】
道産品の通信販売と贈答品の納品をしています。しかし、売れば売るほど赤字が累積してきます。
【2010年5月号】
前回、月次試算表の重要性を認識しましたが、その続きを聞きたいと思います。
【2010年4月号】
会計事務所から、毎月、月次試算表が届きますが、どのようにみればよいのですか?
【2010年3月号】
中小企業金融支援措置として、昨年12月に施工された「金融円滑化法」により金融機関の対応は、どのように変わったのでしょうか。
【2010年2月号】
飲食店ですが、客単価を下げて戦いたいと思っています。
【2010年1月号】
こんな不況の中では、どんな工夫をしても業績を上げることは困難です。
【2009年12月号】
食品卸をしています。これまで、長年取引をしていた食品加工業者から後継者がいないから、その会社をM&Aで引き継いでくれないかと相談された。
【2009年11月号】
修行のため同業他社に入社させていた長男を呼び寄せ、事業を引き継がせたいと思いますが、言を左右にして、なかなか承諾しません。
【2009年10月号】
郊外で洋食店を開業しています。なかなか顧客さんが増えず困っています。
【2009年9月号】
3ヶ月連続して現金が不足し、個人の預金を会社につぎ込んで帳尻を合わせています。
【2009年8月号】
よく取引銀行から月次試算表を求められますが、決算報告書で充分ではないのでしょうか。また、私自身も、どこを、どうチエックするのか、よくわかりません。
【2009年7月号】
融資を申し込んでから2ヶ月以上経過しているが、さっぱり進んでいないようです。どのように対処すべきですか?
【2009年6月号】
資金繰りで銀行に相談したら、セーフテイネット融資を勧められたのですが?
【2009年5月号】
大型ホテルの料金引き下げ攻勢で客足が落ちています。割烹旅館として自負しているだけに客単価を下げることには挫折感があります。
【2009年4月号】
近くの回転寿司店よりも「ネタ」が新鮮だし、価格もそれほど変わらないのに顧客さんが来ないのですが?