今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2016年9月号
ある日突然―相続税に悩む
相続税の対象者が大幅に増加
相続税は2015年1月の税制改正で基礎控除の引き下げと最高税率の引き上げなどにより大幅な増税になりました。これまで亡くなった人全体に占める課税対象者割合が4%であったものが、6%程度までに増加すると予想され、にわかに相続税への関心が高まってきました。日本は世界の中で相続に厳しい国に属すると考えられます(表1)。
表1 主要国の相続税基礎控除額、税率
国名 | 基礎控除額 | 税率 |
アメリカ | 6億5,000万円 | 18%~40% |
イギリス | 6,000万円 | 一律40% |
フランス | 1,350万円 | 5%~45% |
ドイツ | 5,400万円 | 7%~30% |
日本 | 3,600万円 | 10%~55% |
増税の内容について説明します。
基礎控除額の削減(表2)
例 夫が死亡し配偶者と子2人、遺産額7千万円
表2
改正前 | 改正後 |
①定額基礎控除 5,000万円 | 3,000万円 |
②相続人1人あたり1,000万円 | 600万円 |
これまでの基礎控除額では、5千万円+(1千万円×3人)=8千万円。 遺産額7千万円は基礎控除額8千万円以下ですから、相続税はかかりません。改正後の基礎控除は3千万円+(6百万円×3人)=4千8百万円ですから、7千万円-4千8百万円=2千2百万円に対して相続税が課税されます。
現在、ゆとりある老後を暮らすには最低限、自宅と5千万円程度が必要とされていますが、老後にも容赦なく課税されることになります。
相続税を理解し節税を考える4つのポイント
①相続対象の財産と相続税上の評価額を検討する
相続税の対象となる資産と控除できる負債などを把握し、その財産が相続税法上、いくらで評価されるかを理解します。基本的に相続税の評価額は相続発生時の時価であり購入時の価格ではありません。
②相続税の把握と納税資金の準備
相続税法では、配偶者には相続財産1億6千万円か、遺産全体評価額の2分の1までの部分について税額控除ができるなどの特例も用意されています。誰に何を、どれくらい相続させたら良いか、相続税額のシミュレーションと納税資金を計算し準備しておくことが必要です。
③生前贈与の活用
計画的に準備しながら配偶者への住宅取得控除、子に対する住宅購入資金の贈与など、生前贈与制度を活用し相続税の負担軽減を図ります。
④争族対策を検討する
相続税申告には遺産分割が必要ですが、遺産分割を巡り、全体の3割程度の案件について大なり小なり争いが生ずるといわれています。その対策を行っておくことも重要です。
相続税の引き上げ
増税前の税率 | 増税後の税率 | ||
---|---|---|---|
各相続人の法定相続分 | 1,000万円以下 | 10% | |
1,000万円以下 | 10% | 1,000万円超3,000万円以下 | 15% |
1,000万円超3,000万円以下 | 15% | 3,000万円超5,000万円以下 | 20% |
3,000万円超5.000万円以下 | 20% | 5,000万円超1億円以下 | 30% |
5,000万円超1億円以下 | 30% | 1億円超2億円以下 | 40% |
1億円超3億円以下 | 40% | 2億円超3億円以下 | 45% |
3億円超 | 50% | 3億円超6億円以下 | 50% |
6億円超 | 55% |