今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2015年12月号
最低賃金のアップに泣く
1 北海道の最低賃金水準は高い
今回決まった北海道の最低賃金額七百六十四円は全国四十七都道府県中十二位と関東圏、中京圏、大阪国に次ぐ高い水準です。
一方、道民所得水準は年間二百四十七万円と全国三十四位の低位にあります。
所得額と最低賃金額の関係は、統計上、正の相関関係があると考えられ、その意味では道内の最低賃金水準は高いともいえます。
最低賃金が上昇すれば、正社員との逆転現象も生じかねず、社員給与もそれに準じて上昇し、人件費負担はさらに増加します。
2 付加価値額と労働分配率で適正人件費を考える
労働分配率は、その企業が稼いだ付加価値のうち、どれくらいの割合が人件費として支出されるかを示す指標です。
日本政策金融公庫の経営指標においても生産性評価の指標として取り上げられています。
(1)付加価値額の算定をしてみる
付加価値というと難しいとの先入観がありますが、決算書から簡単に計算できます。
この計算方式には中小企業庁方式と日本銀行方式の二つがありますが、一般的に利用されているのは日本銀行による加算方式です。
付加価値額=「経常利益+人件費+賃貸料+減価償却費+支払利息+租税公課」
人件費は役員報酬、給与、賃金、パート給与、法定福利費、福利厚生費の合計額を言います。
(2)付加価値率の計算
付加価値率=付加価値額/売上高
売上高のうち自社が社内で生産した付加価値がどれくらいあるかということを示しています。
売上総利益率を粗付加価値とする簡易な計算方法もありますが、業種、業態、規模により、かなりばらつきがあります。
最近は付加価値率を利用する企業が増加しています。
(3)労働分配率
労働分配率が高いことは、付加価値のうち人件費として流出する割合が大きいことを示していますが、一方、低ければ低いほど良いというわけにもいきません。
あまりにも低い場合は、従業員の生活維持や勤労意欲、定着性に問題がないかどうかの視点から判断する必要があります。
労働分配率=人件費/付加価値額
主要産業の付加価値率、労働分配率は以下の通りです。
日本政策金融公庫経営指標 | ||
---|---|---|
- | 付加価値率 | 労働分配率 |
製造業 | 36.8% | 46.9% |
建設業 | 33.4% | 63.3% |
情報通信業 | 39.0% | 56.8% |
卸売業 | 6.4% | 52.5% |
小売業 | 18.2% | 48.7% |
飲食業 | 38.9% | 58.2% |
3 中・長期の視点から人件費を考える
言うまでもないことですが、これから人口減少時代に突入します。
特に生産年齢人口が急速に減少しますから、人手不足と給与水準の高騰は避けられないと考えられます。
短期的には業務内容を見直し、単純労働にはマニュアル化による中高年者の積極的雇用、女性労働者の家庭事情に応じた多様な勤務態勢の導入や正社員登用などによる生産性向上と、柔軟かつ多様な雇用対策が重要になってくると考えられます。