今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2016年12月号
節税の出発点 生前贈与
1 必要なときに活きたお金の使い方
以前、「いずれ渡すのであれば、相続まで待たせるのではなく、子や孫が一番必要なときに渡すのが活きたお金の使い方だよ」と言われたことがあります。このように相続税対策は生前贈与を上手に利用することが第一歩です。税制上も生前贈与制度がいくつか用意されています。
2 誰もが知っている110万円控除
1年間に贈与した財産の価額が110万円の贈与税基礎控除以下であれば申告する義務はありません。年間贈与額が110万円を超える場合は、控除後の金額に税率を乗じ、翌年3月15日までに申告して納税します。この場合、直系尊属から子や孫に対する贈与については特例税率が適用され税額が軽減されます。
毎年、贈与契約書を作成し、確定日付等により贈与日を明確にしておく必要があります。
基礎控除後金額 | 一般税率 | 特例税率 |
200万円以下 | 10% | 10% |
300万円以下 | 15% | 15% |
400万円以下 | 20% | 15% |
600万円以下 | 30% | 20% |
以下省略
3 夫婦間の居住用不動産贈与の配偶者控除の特例
婚姻期間20年超の夫婦間で、現に住んでいる住宅や居住用の住宅購入のための金銭贈与がある場合、贈与税の基礎控除110万円に加えて、2千万円までの特別控除が認められます。この制度は同一の夫婦間では一回しかできません。翌年3 月15日までに所定の添付書類をつけて贈与税の確定申告をする必要があります。
4 父母などから住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度
父母や祖父母など直系尊属から金銭贈与を受けて住宅を取得し、翌年3月15日までに居住した場合(居住見込も含む)、700万円~1200万円(住宅の構造などにより異なる)までを限度として贈与税が課税されません。この非課税限度額は29年9月までの適用ですが、その後も年度ごとに変更されますので注意が必要です。受贈者の合計所得金額が2千万円以下など適用要件や添付書類などが細かく定められています。贈与年の翌年3月15日までに必要書類を添付の上、贈与税の申告が必要です。
5 結婚、妊娠、子育て、教育資金などの一括贈与制度
平成31年3月31日までの特別措置として直系尊属から子や孫に対し、結婚、子育て、教育など、将来の準備資金として1 千万円を限度とする子や孫名義の預金口座を開設した場合に贈与税が非課税とされます(実際に預金から必要資金を引き出す場合の条件など詳細は金融機関にご相談ください)。
6 何にでも使える相続時精算課税制度
60歳以上の父母から20歳以上の子や孫に対して財産を贈与した場合に2500万円までの贈与税の課税を相続時点まで猶予し、2500万円を超える贈与には、超える金額の20%を相続税の前払いとして納税する制度です。この制度により贈与された財産(現金、不動産を問わずあらゆる財が対象になります)は、将来、相続発生時に相続財産に加算され精算されます。この評価額は制度適用時の額とされているため、将来値上がりの見込みがある財産・不動産などの贈与では節税効果が生じます。なお、利用した際は贈与税の申告が必要ですが、さらに、以後の贈与全てにこの制度の継続適用が必要です。