今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2016年2月号
悪循環から好循環への転換
経営は仕入から製造、加工、輸送、販売などのサイクルの中で各段階ごとに付加価値を付けて利益を循環させる仕組みになっています。この中で一カ所でも、付加価値の循環を阻害しているものがあると業績が悪化し、反対に循環がうまくいくと業績がアップします。
1.バリューチェーンをつなぐ
(1)商品が悪いのではなく、営業の仕方が悪いのです
当社は年商十五億円、販売先は二百社の食品加工会社です。先代社長当時から営業部門のトップとして販売を仕切ってきた営業部長の退職により、社内に激震が走ったのは当然です。当社のように業歴の長い会社ほど、製造部門中心の経営組織であり、「つくった商品は必ず売れる」という思い込みが強く、営業の方は営業部長に任せきりで、せいぜい毎月の売上高増減だけで一喜一憂して終わっている場合が多いようです。
社長が二代目ということになると、なかなか突っ込んだ口出しもできないということも理解できます。
(2)競争業者が納入価格を決めている
本来は「販売あっての製造」ですから、社長は製造部門の管理と同時に、営業についても販売戦略や収益分析、効率化などが必要だったと思われます。信頼して任せたとしても頼りきりは危険です。これは反省点ですが、売上高が減少したのに、なぜ利益率は上昇したのでしょう。
調査の結果、これまでは「同様の商品を納入している他社の納入単価は○○円であり、それ以下の納入単価で販売交渉をしなければ売上は維持できない」が切り札でした。製造原価の把握と同時に自社製品への誇りが全く感じられず、販売価格は競争業者が決めていたと言っても過言ではありません。新任の営業部長は、品質へのアドバイスや納入先への商品説明を通じた信頼関係など、これまでと異なる営業活動に取り組んだのです。この結果、安さだけで納入していた取引先との関係は切れましたが、品質と価格に納得した取引先との関係が再構築され、納入価格が維持され利益率が向上したのです。
2.商品に誇りと自信を持つ
先日、テレビで外国人バイヤーが「ヨーロッパでは業種や規模の大小を問わず、いかに高く売るかを考えるが、日本はなぜ安く売ることにしのぎを削っているのか」と不思議がっていました。もちろん、業種によって差があると考えられますが、当社でも発展に貢献した有名なブランド商品があるにもかかわらず、単価の切り下げのみを競争手段としている間にスーパーの店頭に特価品として陳列されるほど落ちぶれてしまったのです。自らの手で、せっかくのブランド価値を毀損してしまったと言うべきでしょう。ブランドこそ価格競争に巻き込まれないための有力な手段です。安売りだけを武器とした安易な販売戦略は、企業の体質を損ないます。
「営業は断られたときから始まる」。厳しい販売活動の中で築かれてきた営業マンの心構えです。業績が回復するきっかけが見えたこの時を逃さず、価格競争に打ち勝つ自信のある商品づくりを目指すとともに、社長自ら営業の第一線に飛び込んで、回り始めた好循環の牽引力となるよう行動すべきだと考えます。