今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2017年11月号
相続税への招待(2) 相続財産の評価
1、相続財産の評価は国税庁の「相続財産基本通達」による
相続税が日本の税制に取り入れられたのは、所得税に次いで2番目に古く、1905年(明治38年)です。江戸時代の税制である「地租税」の流れを受け、税制の中では、比較的早く制定されていたことになります。法人税は1940年(昭和15年)ですから、随分後になってから制定されています。さて、相続税は当初から通達税制だという批判がありますが、相続財産の評価は「相続財産基本通達」によって詳細に定められています。もともと「通達」とは上級官庁から、事務担当部門に対し、法律の具体的な執行手続きを指示した内部資料ですが、この点を捉えて財産評価が法律でなく通達によっていることに批判があるわけです。しかし、現状の実務としてはこの通達によって財産評価されます。
2、主要な評価方法
(1)預貯金
相続開始日(被相続人が死亡した日)の預貯金の残高です。なお、相続日前6カ月~1年間程度の間に、多額の預金解約や引き出しがある場合は、その使途の説明を求められます。また定期預金などは相続の日に解約したものとみなして利息も含めて評価額とされます。外貨預金は金融機関が公表している為替柑場により円に換算して評価します。
(2)貸付金
注意点としては自社に対する貸付金の評価です。中小企業では、資金繰りのため個人預金を会社に投入したり、役貝報酬の未払金等を計上している例も多く見受けられますが、これらは、すべて貸付債権として相続財産に入ります。自社株式は、業績低迷などにより評価額が低いのに、多額の貸付金のため思いもかけず、相続税額が多く納税質金の確保に苦慮する場合が見受けられます。早期回収困難な貸付金は債務免除などにより早めに処理しておくことをおすすめします。
(3)保険金
みなし相続財産として相続財産の中に入ることは前回で説明しましたが、被相続人が契約し保険料を負担、家族を保険事故の対象としている保険契約の評価は、保険金受取人に対する権利として、相続開始日に中途解約したとして支払われる解約返戻金を相続財産として評価することとされています。
(4)ゴルフやリゾート会員権
取引相場があるものについては、原則として取引相場の70%で評価します。取引相場のないもので預託金のあるものは、返還時期に基づいて評価します。購入価額に比して著しく時価が下落しているものは、売却などにより、あらかじめ損出しをしておくことも考えられます。
(5)上場株式の評価
次の評価額のうち最も低い評価額とされています。
イ 相続開始日の最終取引価格
口 相続開始月の毎日の最終価額平均額
ハ 相続開始日前月の最終価額平均額
二 相続開始月前前月の最終価額平均額
これらの取引金額については証券会社などでお調べください。
(6)同族会社の株式評価額
最も難解な評価方法です。純資産価額方式、類似業種比準価額方式、その併用方式、配当還元方式など会社の規模や株主の親族関係、持株割合などにより評価方法が異なります。非常に複雑な計算を必要としますから、決算終了後、会計事務所により評価してもらうことをおすすめします。
(7)その他
自動車、家財、書画骨董に至るまで評価方法が細かく定められています。
次回は、自宅や貸家、貸宅地など不動産に関する評価について検討します。