今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2013年5月号
一、租税輸出防止の視点を重視
国際的に見ると、OECD加盟国を始め、各国政府は法人税引き下げに躍起となっています。経済のグローバル化に伴い、海外進出が中小企業にも波及し、経営者は、租税負担の少ない国に経営拠点や生産設備等を移転しようと考えています。企業が海外に移転し法人税や固定資産税、源泉所得税などが国外に移転することを租税輸出と言いますが、租税輸出が続けば、当然、その国の租税収入が減少し経済力が大きく損なわれます。各国は、必死にそれを食い止めようとしており、我が国も例外ではありません。
二、法人課税から個人課税強化へ転換
税制の基本政策は、社会保障の財源としての消費税増税とともに法人税減収分を所得税や相続税の個人増税によって賄うという方向に大きく舵を切ったと考えられます。このような背景を考えると、中小企業が、これまで常識としてきた節税戦略を再検討する必要がありそうです。
(1)従来、法人税節税策の1つとして、法人利益の圧縮を役員報酬の増額で対応してきましたが、これからは高額な累進税率による所得税負担よりも、むしろ、法人税を課税されても、会社に利益を留保する方が有利に働く場合が出てくると予想されます。
(2) 法人税節税のため、役員報酬を大幅に増額しても、資金繰り等を勘案し、現金流出を行わず、役員借入金や役員報酬未払金として経理処理しているケースも多く目にしますが、万が一、相続発生時には、会社に対する債権として、その役員の相続財産の中に加えられ相続税の対象になります。税制改正による相続税負担が増加するなかで、従来通りのそのような対処で良いのかどうかも検討の余地がありそうです。
(3)同族会社株式の生前贈与による贈与税や相続税負担の軽減措置として制定されている経営承継円滑化法が、今回の改正により使い勝手が良くなり、事業承継が大きく進展する可能性が高くなった。
三、相続における土地減額措置の拡大
相続時に小規模宅地評価減の特例として事業用地の400㎡まで、居住用地は240㎡まで、それぞれ評価額を80%減額することとされていましたが、両方の適用がある場合の適用面積限度は、併せて400㎡とされていました。今回の改正で、居住用地の最大面積を330㎡まで拡大し、更に事業用地400㎡、住宅用地330㎡合計730㎡までに拡大されました。