今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2012年5月号
- 年商1億円強のケーキ店です。最近、利益率が低下しており、商品構成を変更したいと考えていますが、現場の意見が、なかなか噛み合いません。
- 現状を変えることは、経営者の仕事の中で最も勇気のいることなのです。
一、現物を目の前にして考えること
現場担当者に「お店の一番の売りものは何ですか」 と質問しました。
店頭販売の担当者は、当然のように「莓のショートケーキです」と得意顔でした。
次に、製造部門責任者は「チーズケーキが一押しですよ」と自信のある顔つきです。
更に、通信販売担当者は「勿論、バウンドケーキが大好評ですよ」と自信ありそうです。
つまり、売上高から見れば、ショートケーキが1番の商品ですし、企画力や独創性など個性をアピールする商品としては、差別化がし易いチーズケーキが一押しの筈です。
また、利益を稼いでいるとの立場に立てば、廃棄ロスの少ないマドレーヌやバウンドケーキが一番です。
どの回答も的を得ています。確かに、お店の常連さんは、ショートケーキが美味しいと好評ですし、チーズケーキも道産品を使った上品な味と個性的なデザインで、いわゆる「くせになる味」でお店を代表する商品と言えます。
商品構成を変えると言っても、なかなか踏み切れないということも、よく理解できます。現状を変えることは、経営者の仕事の中で最も勇気のいることなのです。
二、現場の意見をヒントとして
当社の商品別売上高や利益率を分析するとショートケーキやチーズケーキは、売上高も多いが売れ残りによる廃棄ロスも多く利益的な貢献度はいま一つです。
これに対して、バウンドケーキ等の焼き菓子は日持ちしますから、通信販売や贈答品、お歳暮好適品として安定した人気があり、利益貢献度は抜群です。
このような背景から、ショートケーキ等の生ケーキで、更に、店舗のブランド力を上げ、そのブランド力を活かしながら、生ケーキの代替品として、日持ちの良いバウンドケーキが人気を集めているという構図が浮かんできます。
したがって、今後も生ケーキのブランド力アップに力を入れながら、焼き菓子部門は手づくり風味を生かした量産体制によるコスト削減という戦略が見えてきます。
三、商品を前に自問自答しなさい
商品をより磨き上げるためには、商品を目の前に、常時、次の様な質問を繰り返してください。
(1)この商品は、何故、売れているのか。何故、利益をもたらしているのか。
(2)本当に、この商品が利益を稼いでいるのか、以前は稼いでいたが今もそうか。
(3)顧客は、その商品にどんな価値を見いだしているのか。