今月の相談コーナー 毎月 経営に関する様々な疑問にお答えいたします
2011年2月号
- 取引先から、後継者がいない自分の会社を買わないかと云われています。
- 最近、後継者がいない会社のM&Aが、盛んに行われるようになりました。M&Aは永年培われてきた相手企業の経営資源を直ちに引き継ぐ事ができるので、自社独力で、それと同等の営業基盤を築くための時間や労力を考えると魅力的です。しかし、反面、M&Aの70%は、結果的に失敗していると云われています。
一、先ず、妥当な価格を算出する
失敗した原因の第1は高い買物をしたと云うに尽きます。
M&Aによる売買は先方会社の株式を買い取る事で成立しますが、その株式評価はその会社のすべての資産を時価で評価しそこから引き継ぐべき債務を差し引いて決めます。
この場合に、従業員の退職金債務や簿外債務等見えない債務も加えるなど、利害関係のない第3者の会計専門家に評価を依頼して行う必要があります。
二、 営業権の評価は慎重に
譲渡企業の経営者は必ず営業権の評価を云いますが、中小企業の場合、営業権評価はよほど著名なブランド名が無いと難しいのが実情です。
税務上も営業権評価は超過利益として一定の計算式もありますが、評価額を算出できない場合が多いようです。
三、シナジー効果を検討する
M&Aの目的は、同業他社を対象とする規模拡大を目指すものと販売業が製造業を対象としたり、反対に製造業が販売業を対象とするなどいわゆる垂直型の買収に大別されます。
いずれにしても、その買収によって買収する会社自体の有形、無形のシナジー効果が波及的に拡大するか否か確実に算定できることが重要な判断要素です。
四、中小企業では、従業員や取引先の引継ぎが可能であること
大企業と異なり中小企業の場合は経営者や役員、従業員と取引先との関係は属人的な要素が極めて強く、M&Aによって、役員や主要な従業員の退職によって販売先等の取引関係が一朝にして崩れる場合も想定されます。
人的資源が確実に引き継がれるかどうかも重要なポイントになります。
五、営業譲渡も視野に入れる
M&Aと一口に言っても本来のM&Aは1割程度であり、ほとんどの場合営業譲渡によることが多いのが実情です。
企業全体を売買するM&Aと異なり、営業譲渡は当社が必要な資産を個別に売買するもので手続的にも簡単で危険性も少ないと考えられます。
いずれにしても、成長を考える企業にとって魅力的な経営手法と云って良いでしょう。